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海老名と厚木の“間” 対談 【泉橋酒造 6代目 橋場友一社長×サンクトガーレン 岩本伸久社長】

2018/12/08
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撮影協力:泉橋酒造株式会社

橋場(以下 橋):サンクトガーレンさんは、オリジナルビールの数がほんと多いですよね。

岩本(以下 岩):依頼があるので、基本的にはお受けしているんですよ。
今ね、オリジナルの依頼がすごい多いんですよ。

:最近すごい変わってきましたよね。それは、すごい感じています。
うちは、そういうのすごく遅くて。最近、いくつかオリジナルを造って欲しいって言われているんです。

:やらないんですか?

:丁度、おととい昨日の話ですけど、やろうかなっていう話になっているんですよ。

:日本酒のオリジナルって完全に米から作るんですよね?
ラベル貼るだけだったら問題ないと思うんですけど…。

:ラベル貼るだけだったら、やりたくないっていうのがありまして。

:そうですよね。
僕たちが最初にオリジナルをやり始めたのは、自分たちの売り場がなかったですし少しでも出荷していきたいなと思ったんですよね。
ビールって今いっぱい小さな醸造所がたくさん出来ているんですよ。
僕の頃は免許取るの大変だったなって思うんですけど。

:最近では海老名でも駅前で始まったし、取引先の酒販店様も2軒ビール始めてます。
もうびっくりですよね、居酒屋さんだったのにビール始めたところもあって。

:飲む人もどんどん増えると良いんですけど(笑)
地ビールは1995年頃1度ブームになって、でも中には品質的にうーん…というものもあって”高くて不味い”と、下火になってしまった。
また同じ歴史を繰り返したくないなと危惧しているんですけど…。

地元から発信していくこと。

:サンクトガーレンさんは老舗中の老舗ですよね。

:古いだけですよ(笑)
ただ、地元は本当に弱くてですね。
厚木でサンクトガーレンを知ってる人が誰もいないっていう時代がずっと続いてましたね。
皆さんが知ってくれたのは、ここ6・7年くらいです。

:そうなんですか。

:厚木はビールといえば厚木ビールさんとかさがみビールさんとかがありますし、
うちは訳のわかんない名前だし輸入品みたいだって言われ続けて厚木では本当マイナーでしたね。
だから、厚木は全然意識してなかったですね。
都内で売る方を選んでいました。
でもやっていくうちに、地元の人に知ってもらうのはやっぱりいいな、嬉しいこともあるなと感じて。
それで積極的に厚木市内のイベントに出させていただいたりして、数軒の酒屋さんが集まってくれたりして。
どこかにアンテナショップみたいのは作りたいなと思っていたんですが、でも厚木でやる勇気はないなぁって思っていて。
そんな中で今年4月、厚木にオープンしたBakery&Beer Butchersの方がメインでやっていただけるということで、8種類樽生で置いていただいてます。

:そうなんですね。

:泉橋さんのお店(※蔵元佳肴 いづみ橋)もずっといきたいなと思っていたんですよ。

:うちがお店出したのは、海外とか行くと田舎の方にはワイナリーがあって必ずその地域にはそこのワインが飲めて地元の食材が美味しく食べられるお店が必ずあるんですよ。
セットなんですよね。この辺は、食の文化的なのが深くないと思っていたんです。

:そうですね、日本自体がそうですよ。都内とかでもやっと最近深まってきたなって思います。

:なので地元の食材を使って、わざわざこっちに来てもらえるようなお店が欲しいなとずっと思っていたんです。

:それで作られたんですね。

:やっとです。お米を作ってきて、酒蔵と田んぼを見てもらいたいって思って。
神奈川県はお酒のイメージがなくて、特に日本酒のイメージがないんです。
首都圏にある良さをわかっていただくには、実際に来てご飯を食べるところがあったほうがいいなっていうのが1つあります。
もちろん、いろんな人が楽しいことが大事なんですけど、芯の通ったわかる人にはわかってもらえるようなお店を作りたいなって思いで作りました。

もしかしたら、ライバルに?

:日本酒の職人さんは本当に冬しか働かないんですか?
夏は…?

:一般的には冬しか造りをやらないのを、うちは夏農業やってるんですけど。
夏は基本、お酒を売ることですね。

:そうか、なるほど。
だから、日本酒の蔵の人がビールやり始めたんでしょ?

:そうそうそう。
夏は時間があるのでビールやってるところ多いですよ。
実はうちも農業をやるか、ビールをやるか真剣に考えてました。

:そうなんですか!

:でも、お酒も満足に売れないのにビール売れるわけないじゃんと思ってやめました。
それで農業を始めた経緯があるんです。

:夏時間があるからってビール造ろうなんて、それ売れるのかな?って思ってましたけど、もっと本気で言った方がいいな(笑)

:言った方がいいです!その通りだと思います!

歴史・文化。

:ビールは2週間で出来ますけど、日本酒なかなか結果がわからなくて大変ですよね。

:方向性を変えるのがすごく難しいです。
ちょっと新しいものを作ってみようかっていうと、2000ℓとか3000ℓできちゃうんですよ。

:そうなんですね。
オリジナルビールをつくっても、僕たちのビールって日持ちしないんですよ。
冷蔵で3ヶ月なので、そこがネックです。
量がいっぱいできちゃうとそこが難しいですね。

:酒はそういう意味では、できたら今は飲めないけど、半年後はウマいとかはありますね。

:日本酒って何年寝かす…とかはないですよね?

:基本的にはないですけど、寝かすことは可能です。
今の日本酒には、寝かしても寝かした先に価値観がなくて。

:そういう文化を作っていかなくてはですね。

:そうなんです。
今、そういうワイン的な寝かしたらすごくイイってところまでいってなくて。

:そうなんですか、こんなに歴史があるのに。

:だから全然ダメなんですよね。
高度成長期になって戦前までは値段が高くてあまり飲めなかった酒が、戦後に所得が上がって今まで飲めなかった人たちも毎晩晩酌で酒が飲めるようになったんですよね。
それに対して日本酒業界はアルコール足して飲めるから、大手メーカーみたいにどんどん醸造して安い酒いっぱい造って…。

:混ぜちゃうんですよね?

:そう混ぜて。
今考えると無駄に大量に造って、無駄に飲んでいたんですよね。
温泉の宴会に行って、本来温泉に入って健康になって帰ってくるはずが、酒飲みすぎて具合悪くなって帰ってくるみたいな。

:それが日本の文化ですよね。

:無駄に大量に飲んでたって僕は思ってますよ。
あれをやりすぎてた時代に、日本酒が嫌われた気がします。

:そうなんですか。
それをずっと引き継がれているなって思いますよ、日本って。

:今酒を飲みはじめている20代30代の方たちは、そういう日本酒文化を知らない方たちが多いですよね。

:そうなんですね。

:初めて飲んだ酒が吟醸酒で普通に飲める。
そういう方たちが多いですよね。

これからのこと。

:吟醸酒ってどうなんですか?
あれってお米のいいところを削ったなって思ってたんですけどそういうことじゃないんですか?
極論ですけど、あれ何が造りたいの?ワイン造りたいのかなって思ってました。

:磨くと、お酒が軽くなって味が綺麗になるんですよ。透明度が増すんです。
磨かない方が複雑なんです。

:あれはいろんな人に飲んで欲しいから造ったもんですよね。
きっと、普段飲まなかった女性にも日本酒の美味しさを知ってもらうきっかけとして。

:そうですね。
そういう意味では、お酒のバリエーションをつくる意味ではすごくプラスですけど。
でも日本酒界は、世界に向けて磨けば磨くほどいいって発信をしちゃってるんです。
ただ、わざわざ作ったものを磨くっていうのは微妙っちゃ微妙ですよね。
米から作っているので余計にすごい思います。

:でも、吟醸酒の方が売れるんですよね?

:売れます。今売れている蔵はこういうものを造って値段を安めにしている蔵が一番売れてます。

:値段の割に美味しい。

:わかりやすいですよね。
美味しいっていうか軽く飲めるって感じですよね。
日本酒は器用すぎて農業じゃない、工業製品的な考え方にすごく行きすぎている気がします。

:なるほど。

:それはどうかなって思うんです。
今、海外生産の日本酒がすごい始まっているんです。
現状は、原料などは日本から持って行ってますけど、多分そのうち地元で米栽培から始めると思うんですよね。

:そうでしょうね。

:その時に日本の酒蔵は、すっごい慌てると思うんですよ。
海外の大きい資本を持ってる人たちには敵わないですよね。
そういう会社が、広い土地を買って、用水路作って、田んぼ作って、お米からお酒造りますみたいなことやりそうじゃないですか。

:市場があればやるでしょうね。

:そうなった時に日本の酒蔵は、負けまくるっていうXデーがあるんじゃないかなって僕は思ってます。
だから「ここじゃなきゃダメなんだよ」って理論が必要なのかなって。

:なかなか難しいですね。
ビールなんかも特にそうですね。
ビールも元々は、重たいものだったんですけど。
ドイツ発展のラガーは、気持ちよくスッキリしていて、なんの邪魔もしないって。
それで、エールはどんどん廃れてきてしまって。
そんな時、80年頃本当のエールを復活させようという動きがアメリカに飛び火したんです。
アメリカって世界中で一番いいものも悪いものもある国じゃないですか。
アメリカのビール造りは、華やかで特徴のあるホップの香りを使ってどんどん上がって行ったんです。

:今の日本酒が海外で造られ始めたのが正にそうで。
日本の大手メーカーが海外に行って海外生産するんじゃなくて、外国人が日本でお酒造りを教わって、日本の正しい教科書を見て造るから大真面目に純米酒を造っているんです。
ワインビジネスをやってる人がどうやら日本酒も儲かるらしいと介入してるのは事実なので。
相当数の酒蔵が米作りからやっておかないとマズイと思っていて、米作りをやる蔵がすごい増えているんです。

:それか、夏はビールにいく蔵だ。笑

:ははは。ビールは自分たちもすごい飲むし。

:昼間っから日本酒をバンバン飲む人あんまりいないですよね。

:そうですね。
お酒を楽しもうと思うとそれなりのシチュエーションと飲み方が必要ですよね。

:そうですよね、ビールだったら割と手軽にね。

:お酒もだいぶ変わってきましたけどね、一部綺麗な飲み方をする人たちもいます。

:ね、飲ませ方を提案していかなきゃいけないですね。

:そうですね。

:ビールもそうなんですよね。
日本酒もきっとそうなんですよね。

サンクトガーレン 岩本伸久社長
日本最老舗地ビール会社として厚木市に醸造所を構え、一升瓶ビールやスイーツビールなど個性的なビールを展開している。
サンクトガーレン
泉橋酒造 6代目 橋場友一社長
海老名市で「酒造りは米作りから」の信念のもと酒米作りから精米・醸造まで一貫して行っている。
泉橋酒造

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