世界でもsakeとして注目を浴びる日本酒。
オシャレなワンカップ日本酒が増えてきたり、若い方や女性の間でも人気が上昇中ですね。
ちょっとしたブームにもなってきている日本酒ですが、まだまだ日本酒の世界に飛び込めない方も多いのではないでしょうか?
今回は日本酒をもっと知りたい方におすすめの海老名で有名な老舗酒蔵「泉橋酒造」。
「泉橋酒造?知ってはいるんだけど、日本酒のことがよくわからなくて。」
「泉橋酒造のお酒ってあまり海老名で見たことないけど・・・」
意外と地元の方ほど、名前は知っているけど、日本酒のことがよくわからなかったり、泉橋酒造をよく知らない人も多いと思います。
普段見ることができない酒蔵見学ツアーを開催されている泉橋酒造。
ここに来れば日本酒のこと、蔵のこと、海老名との密接な関係をまるっと知ることができてしまうんです。
泉橋酒造に日本酒のことも少し教えて頂いたので、酒蔵見学に行く前に、もっと楽しくなる日本酒の予備知識も交えながら泉橋酒造のことをお伝えしていこうと思います。
日本酒が苦手?それはまだ美味しいお酒に出逢っていないだけ。
私も最初は日本酒が苦手でした。
アルコールの香りが強くて、美味しさがさっぱりわからなかったんです。
でも色々な日本酒に出逢ううちに、「好きな味、美味しいお酒に出逢えていない。」ということに気づきました。
そうそう、日本酒のラベルに「大吟醸(だいぎんじょう)」「純米酒」と書かれているのを見たことありますよね?
どうもこの表記がいまいちわからない!
そんな経験ありませんか?
精米歩合でも呼び方が変わるそうで、ピンクに色分けされた「純米」と書かれているものは「米、米麹、水」が原料。
書かれていないものは米と米麹、水の他に醸造アルコールが添加されている日本酒にあたるそうなんです。
ちなみに泉橋酒造で造っている日本酒はピンクに色分けされた「純米酒のみ」。
泉橋酒造のお酒は本当に様々な種類の日本酒があり、季節限定のものも多いので全国からの日本酒ファンからも支持されています。
今回泉橋酒造のお話しとご案内してくださった営業企画部の伊藤さん。
泉橋酒造見学ツアーの案内も担当されているそうなのですが、日本酒のことなら何でもお答えしてくれるスゴイ方。
マニアックな話も対応してくださいますよ!
ー「純米酒」だけを造るって難しいことですよね?
伊藤さん:そうですね。数少ないとは思いますが、昔はどの蔵も純米酒しか作っていなかったんですよ。
美味しいお酒を作るために当時の酒づくりに戻っただけなんです。
ーすばらしいですね!
伊藤さん:私たちは特別なことだとは思っていません。本来の酒づくりに戻ることで美味しいお酒が作れたらと思っていますから。
ーやはり違うものですか?
伊藤さん:純米酒でもお米の精米歩合、酒米の品種、製法で味や香りは全然違いますよ。
最近新たな品種の酒米で日本酒を造ったのですが、それは特に女性に飲んでいただきたいですね。
ー新たな品種の酒米ですか?
伊藤さん:楽風舞(らくふうまい)という10年ほど前に登録された新潟生まれの酒造好適米で、泉橋が力を入れてから5〜6年になる酒米なんですが、透明感のある辛口で、ワインが好きな方にもおすすめで飲みやすいですよ。
ーそれは飲んでみたいです!
伊藤さん:とても美味しいのでぜひ飲んでみてください。
栽培醸造蔵って?
そのまま、伊藤さんに案内されて蔵の隣の田んぼへ。
見てください!!!この壮大な田園風景を!
きれいですね〜。
実は泉橋酒造は酒づくりだけでなく、米づくりもしている全国で珍しい酒蔵なんです。
米づくりをしている酒蔵を泉橋酒造では「栽培醸造蔵(さいばいじょうぞうぐら)」と命名。
軽い気持ちで商標登録してみたら通ってしまったそうです。(橋場社長談)
すご〜い!今後はこういう取り組みをする酒蔵が増えていくと嬉しいですね。
泉橋酒造で使うお米の9割以上は自社栽培。
「さがみ酒米研究会」という原料米の研究・栽培会を行っており、地元の酒米生産者たちの協力のもと、44ヘクタールの酒米栽培(うち8ヘクタールは自社栽培)を行っています。
どのくらいの大きさなんでしょう?
聞いてみれば東京ドーム8.5個分に相当する大きさだそう。
ひ、広い。。。
ちなみに取材した日は1月後半の冬。
ーあれ?伊藤さん、冬の田に水がはっているのを初めて見ました!
伊藤さん:そうなんです。気がつきましたか?
冬の田んぼに水が張っていることは珍しいと思います。
市が用水路の管理をしているので通常は田に水を張れないのですが、泉橋酒造は海老名市の協力によって微生物の環境保全と田の状態を保つ為に、冬の田に水を張る冬季湛水をしています。
ーへぇー!海老名市が協力してくれているんですか!
伊藤さん:冬に水を張ることで土の中の温度が保たれて微生物も生きられるし、水鳥も餌を探しやすくなるんですよね。
ー環境も考えて酒米づくりしているなんてすごいですね。
伊藤さん:25年前まで食糧管理法※1という法律で米づくりと酒造りは分業制だったのですが、法律が解消されてからは泉橋酒造は本来の酒づくりの原点に戻ろうと酒米栽培から精米・醸造まで一貫することになったんです。
伊藤さん:本来の酒蔵は田んぼを継続する為に畑作業ができない冬にお酒を作り、余剰米を消費していたんですよ。
泉橋酒造もお米を作りながら酒造りをしているという考えですね。 伊藤さん:蔵人が冬場だけお酒づくりをするのが一般的ですが、泉橋酒造の夏は酒米を作る時期なので、年間通して蔵人たちは働きます。杜氏は全員で5名。下は28歳〜45歳と酒作りはベテラン揃い。それぞれ管理する田んぼがあり、米づくりも蔵人たちが責任をもって管理します。
ー責任重大ですね。
伊藤さん:そうなんです。でもやりがいはあります。
自分で造ったお米でお酒が造れるのですから。
※1 戦中戦後に食糧(特に米)の需給と価格の安定のための生産・流通・消費を政府が管理する法律
米づくりから精米、酒づくりまですべて一貫!
最初にもお伝えしましたが、泉橋酒造は全国でも珍しい酒米づくりから精米、醸造まですべて一貫して行っています。
こらちは醸造場所。
なかなか見られない場所ですね。
日本酒を作っているとてもデリケートな場所なので、実際に入らせてもらうと感動します!
泉橋酒造では各作業工程に昔ながらの製法を取り入れているので、その中でも特に珍しい工程を見せていただきました。
自社精米と丹沢山系伏流水仕込み井戸
お米が収穫されると酒米用に精米を行います。
では、お酒づくりの精米はどんな風にしているのでしょう?
酒づくりに使用する上で重要なお米の中心部心白(しんぱく)。
心白は最もたんぱく質が多く含まれているので、この部分まで磨く※2ことで、日本酒の味や香りも変化すると言われています。
お酒によっては1粒に対して、こんなに削るんですよ〜!
ちょっと専門的な話になりますが、ラベル表記の精米歩合の見分け方ってわかりますか?
これがどうゆう見方をすればいいかわからないんですよね。
伊藤さんに泉橋酒造のラベルを使って教えて頂いたので、少しこちらでご紹介しますね。
例えば、ラベルに精米歩合40%と書かれていたとします。
このラベルに表記されている精米歩合の%はお米の残っている部分を表しているんです。
よく、精米をした%かと思ってしまうのですが、
数字が低いほど、1粒をより多く磨いたということだそうです。
技術的に難しいと言われている精米工程。
専門家へお願いする酒蔵も多い中、泉橋酒造ではすべて自社で精米しています。
こちらもぜひ実際に見て頂きたいところです。
どんなお酒を造っていくか、どこまで磨きをかけるかなどを考えながら何度も何度も繰り返し精米します。
もちろん、精米したあとのヌカは米粉やアカヌカとして分類し、捨てずに様々な用途に使用しているのだとか。
そして、日本酒を仕込む時に使用する仕込み水は地元を流れる丹沢山系の伏流水を地下100mよりくみ上げて使用。
この辺りのお水は硬水と言われているそうなのですが、
一般的な日本の軟水よりも4倍硬いお水だそうで、ミネラルやマグネシウムなどの栄養が高いのも特徴です。
仕込み水が軟水か硬水かによっても日本酒の味は違うんですって。
※2 お米を削ること
伝統的な麹蓋製法(こうじぶたせいほう)
精米後は洗米して、様々な工程に使用する蒸米(じょうまい)をつくります。
こちらも昔ながらの蒸気の熱だけで蒸らす方法をとっているそうです。
麹を作る製麹室(せいきくしつ)。
室の中で工程別に配置しているそうです。
この麹を作る工程はすべて麹蓋製法。
一般的には大きな容器で麹を一気に作るそうですが、麹蓋という小さい木枠を使用して作ります。この麹蓋をなんと300枚も毎日使って、運んで、洗っての作業を少人数でしているんですって!
でも、この伝統的な麹蓋製法を用いることで通気性もよく、効率も良いのだとか。
生酛仕込み(きもとじこ)と槽絞り(ふねしぼ)
日本酒を造る上で欠かせないのが、酒を作る母と書いて酒母(しゅぼ)※3です。
酒母を作る方法は一般的に「生酛」「山廃(やまはい)」「速醸」に分かれるのですが、泉橋酒造は自然の力を活用した昔ながらの「生酛仕込み」。
生酛と山廃についてはちょっと難しいので、もっと詳しく知りたい方はこちらを読んでみてくださいね。
▷生酛と山廃について|泉橋酒造
生酛仕込みと山廃仕込みは速醸に比べて倍の日数かかるとのこと。
とても時間と労力がかかるつくり方なんですね〜。
そして、醸造したもろみ※4ができ、お酒を絞る工程に進みます。
この工程も伝統的な「槽(ふね)絞り」という方法で絞ります。
こちらが酒を絞る槽(ふね)。
なんとなく、船にも見えるような。。。
これでお酒をしぼるんですね!ものすごく大きい!
この方法はもろみを袋に一つ一つ小分けして手作業で槽(ふね)の中に並べ重ね、圧搾します。
槽絞りもなかなかの重労働!
想像しただけで大変さが伝わりますが、手間のかかる絞りにこだわる理由はやはり「美味しいお酒を造るため」。
ここにもお酒づくりのこだわりが光ります。
そして、絞った後に出るのは私たちも馴染みのある「酒かす」。
酒粕にも様々な形がありますが、袋絞りの酒かすは粘りがあり、粘土状なのが特徴。
冬の仕込み時期にのみ販売される酒かすは地元の方も大量に購入される事もあるのだとか。
これは地元に住んでいたらぜったい欲しい!
※3 アルコール発酵に必要な酵母菌を育てたもの。
※4 酒や醬油などの醸造で,発酵がすんでまだ漉(こ)していないもの。酒かすと清酒に分ける前の段階。
日本酒を学ぶなら、まずは泉橋の酒蔵見学へ!
いかがでしたか?
酒蔵を定期的に解放してくれる場所が少ない中、神奈川県で気軽に日本酒を学ぶなら、まずは泉橋酒造がオススメ。
また昔ながらの製造過程が見られるのも魅力の一つです。
泉橋酒造の見学ツアーに参加すると日本酒のことや製法だけでなく、地元海老名に酒蔵があることに誇りが持てるはず!
もちろん、日本酒に詳しい方も大満足できる酒蔵なので、参加する価値がありますよ。
日本酒の他にも酒米を使った味噌や小田原の梅十郎を使った日本酒仕込みの梅酒なども作っているので、日本酒が苦手な方はそちらもぜひ試してみてくださいね!
泉橋酒造の敷地内には酒蔵だけでなく直営店もあるので、海老名から散歩がてらにふらっと立ち寄ってみるのもいいかもしれません。
今後、海老名での泉橋酒造の活動を見守り、日本酒を通して応援していきたいですね!
おまけ
日本酒、発酵マニアのためにお酒の発酵する音を特別に泉橋酒造で撮らせていただきました。
プチプチ….って聞こえましたか?
発酵していますね〜!
菌が生きている感じが伝わって、発酵好きとしてはついつい興奮気味に。笑
運が良ければ、酒蔵見学で実際に見る事ができるかもしれませんね。
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