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【弥生神社 連載コラム Vol.3】重陽(ちょうよう)の節句 ~菊の“霊力”と茱萸嚢(しゅゆのう)~

2018/10/19by 弥生神社


noma読者のみなさん、弥生神社 権禰宜(ごんねぎ)でございます。
夏の猛暑も過ぎ去り、いよいよ秋も深まってまいりました。
弥生神社の銀杏の木々もそろそろ葉を黄色く染めはじめる頃です。

前回、初夏のコラムでは「端午(たんご)の節句」と薬玉作りについてお伝えしました。
今回は、9月9日の節句、「重陽(ちょうよう)の節句」のならわしと弥生神社のワークショップをあわせてご紹介します。
「重陽の節句」は旧暦では10月17日頃にあたり、菊の花咲く頃。
「菊の節句」ともいわれますが、ほかの節句にくらべてあまりなじみがないかもしれません。

“陽が重なる”と書く「重陽」の節句―。

中国の陰陽思想で奇数は「陽」、すなわち縁起の良い数とされていましたが、その最大数である9が重なると“気”が強すぎるといわれ9月9日には祓いの行事が行なわれてきました。
同時に厄除けや長寿を祈るさまざまな風習が生まれ、平安時代には日本に伝わりました。

菊の“霊力”と節句のならわし

露ながら折りてかざさむ菊の花 老いせぬ秋の久しかるべく
(紀友則『古今和歌集』)

垣根なる菊のきせわた今朝みれば まだき盛りの花咲きにけり

(藤原信実『新撰六帖』)

重陽の節句を詠んだ平安時代の和歌です。
一首めは、菊花の露により長寿を得るという言い伝えがもとにあり、2首めには、菊の「被せ綿(きせわた)」という節句の風習が詠まれています。
中国では古来、菊は“邪気を祓い長寿をもたらす”と考えられてきました。
「翁草(おきなぐさ)」「千代見草(ちよみくさ)」「齢草(よわいくさ)」とも呼ばれ、実際に漢方薬としても用いられています。
今に伝わる『菊慈童(きくじどう)』という伝説は、菊の葉の露が谷の水に滴り霊薬となり、これを飲んだ少年が以来、数百年も生きながらえ、この谷の流れの末を飲んだ民も皆、病気が治り長寿を得たというお話です。
この伝説は日本の伝統芸能である能の演目となっています。
このような菊の“霊力”(不思議な力)に基づいた伝説とともに、さまざまな節句の風習が日本に伝わりました。
平安時代の宮中において菊を観賞する「観菊の宴」が催されるほか、重陽の節句では菊が様々に使われてきいました。
節句の日の前夜、菊の花に綿をかぶせておき、当日の朝、菊の露や香りを含んだ綿で体を清める「被せ綿(きせわた)」、菊を湯船に浮かべる「菊湯」、節句の日に摘んで天日干しにした菊の花びらを詰めて作った「菊枕」、菊の花びらを浮かせたり、それを浸した水で仕込みをしたりする「菊酒」など、いずれも菊のもつ不思議な力に人々が厄除けや長寿の願いを託して行われてきた節句のならわしです。
菊花の美しさや香りを味わいながらの行事を通して、季節の節目を楽しんでいた古の人々の姿が浮かびます。

茱萸嚢(しゅゆのう)~厄除けと長寿を祈る~

江戸時代後期の絵師である酒井抱一の描いた「五節句図・重陽宴」 には、菊を鑑賞する人物とともに、菊の花を挿した赤い袋が御帳台(みちょうだい)の柱に掛けてあるのがわかります。
この袋が「茱萸嚢(しゅゆのう)」で、呉茱萸(ごしゅゆ)の実*1を緋色の袋に納めたもの、中国の故事*2にならい災厄を除き長寿を願うものとして飾られました。
とくに宮中では、重陽の節句から翌年の端午の節句まで茱萸嚢を掛け、端午の節句から重陽の節句まで薬玉を掛けて天皇の健康を願うしきたりがありました。*3

*1 呉茱萸は、ミカン科の落葉小高木で、赤い実は薬用に使われました。中国の原産で、日本には享保年間(1716~1736)に渡来しました。
*2 9月9日に禍が起きるが「茱萸の枝を肘に巻いて高いところへ上り、菊酒を飲む」「茱萸袋を家の柱に掛ける」、「茱萸の枝を折って頭にさす」などすれば難を逃れられるという言い伝えがありました。この故事から中国では高いところへ登り菊酒を飲んで厄を祓う、「登高」という慣習がありました。
*3 弥生神社では毎年、端午の節句の時期(旧暦にあわせて6月)に薬玉を作るワークショップを開催しています。

ワークショップ「重陽の節句~茱萸嚢作りと菊花アレンジ~」


*ワークショップの写真は、昨年(平成29年10月)撮影のものです。
弥生神社では重陽の節句のワークショップを旧暦にあわせて毎年10月に行っています。
今年は10月6日と8日に茱萸嚢作りのワークショップを開催しました。
菊の節句にちなんで、菊花のアレンジメントもあわせて楽しめます。
茱萸嚢作りでは、和服の帯地を手縫いして15~20cmものを作ります。
茱萸嚢は緋色の袋だったことから、赤色の帯地を中心に用意しています。

まずは型紙をあてて布を切り、切った二枚の布を縫い合わせます。
そして縫い合わせた布をひっくり返して袋状にし、口の部分の布端を袋の内側に織り込みます。
できあがった袋に呉茱萸の実を少し包んで入れ、綿を詰めて形を整えます。

呉茱萸の実は、少量でも柑橘系で漢方薬のような強い香りがします。
最後に、お好きな色の江戸打ち紐で口を閉じて結んでできあがりです。
帯地は固くてすこし縫いにくいので、ミシンでのお手伝いもしております。
縫い物が苦手という方でもお気軽に参加していただけます。
菊花アレンジでは奉書紙を使って菊花を包み、赤や金銀の水引を結び切りしてシンプルに飾ります。
菊の香りとともに日本に伝わる水引や紙の文化を体験します。

ここでは「木花包み」と呼ばれる折り方をご紹介します。贈り物や季節のしつらえにお役立ていただけます。
弥生神社のワークショップ「重陽の節句~茱萸嚢作りと菊花アレンジ~」では、こんなふうに重陽の節句の風習を学びながら、古の人たちが季節の節々に抱いたさまざまな願いに思いを馳せ、今に伝わる節句の楽しみ方を知り、そして実際、同じ季節に追体験しながら節句を楽しもうという行事です。

 

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