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【弥生神社 連載コラム Vol.2】「端午の節句と薬玉づくり」

2018/05/29更新:2018/10/07by 弥生神社


noma読者のみなさん、弥生神社 権禰宜(ごんねぎ)でございます。
弥生神社では境内の緑も色濃くなり、紫陽花も色づいてきました。

もうすぐ草草の香り立つ梅雨の季節がやってきます。
日本には、季節の節目にあたり様々な行事を行う「節句」があります。
「人日(じんじつ)」「上巳(じょうし)」「端午(たんご)」「七夕」「重陽(ちょうよう)」の五節句です。
節句の行事にはその季節の植物が使われ、様々な願いを込めて飾ったり香りや味を楽しんだりします。
身のまわりの自然の変化を感じながらの日常があり、自然のサイクルとともに一年の生活や行事のサイクルがあったのですね。
弥生神社ではそんな節句の風習を学んだり、実際に節句にちなんだものを作ったり触れたり体験してみようと節句に合わせてワークショップを開催しています。
五月の節句は「端午」
今回は、「端午の節句について」「薬玉づくり」のワークショップの様子をご紹介します。

「端午の節句」とは?~薬草で「邪気」を祓う~

「端午の節句」は五月五日ですが、旧暦ですと来月六月の半ばにあたります。
「端午」とはもともとの月の「端(はじめ)」の「午(うま)」の日*1 を意味しており、「午(ご)」が「五」と同じ音であるため、毎月五日を指すようになり、やがては五月五日になったということです。
端午の節句の時期は、梅雨時なので薬草が良く育ちます。

また、ものが痛みやすく「邪気(じゃき)」の多い時期と考えられていました。
それゆえ中国ではこの日、薬草を摘んだり、蓬で作った人形を戸口に飾ったりしていました。
そんな風習が、奈良時代には日本に伝わり、平安時代には菖蒲(しょうぶ)を蓬(よもぎ)とともに軒に下げたり、湯に入れて菖蒲湯として浴していました。
香り高い菖蒲や蓬には、邪気を祓い魔物を祓(はら)う力があると考えられていたのです。
やがて江戸時代になると、武家社会を背景に菖蒲と「尚武」をかけた「尚武(武士を尊ぶ)の節句」へと移り、現代へと続く男の子の誕生と成長を祝う節句となりました。

*1 午の日(うまのひ)は、干支と同じ順番で十二日に一度巡ってきます。

端午の節句と「薬玉」~平安時代の宮中より願いを込めて~

端午の節句には、香りの強い薬玉を作り簾(すだれ)や柱にかけて邪気を祓い厄除けと長寿の願いを込める風習がありました。

薬玉は、「麝香(じゃこう)」「沈香(じんこう)」「丁子(ちょうじ)」などの香物を錦の布で包んで玉にして、造花や菖蒲、蓬の葉で飾り、五色の紐を垂らして飾っていたといいます。
中国から伝わり、平安時代には贈答用に盛んに作られたそうです。

「節(せち)は五月にしく月はなし。菖蒲、蓬などのかをりあひたる、いみじうをかし
(中略)
空のけしき曇りわたりたるに中宮などには縫殿(ぬいどの)より御薬玉とて色々の糸を組み下げて参らせたれば、御帳(みちょう)立て たる母屋(もや)の柱に左右に付けたり」『枕草子 三十六段』*2

平安時代の宮中の様子を書いた清少納言のエッセイ『枕草子』にもこんなふうに薬玉について記されており『源氏物語』や『今昔物語集』などにも「薬玉」の語が見られます。夏の季語にもなっており、この季節の風物詩だったのでしょう。
また、その年の秋にあたる「重陽の節句」には、薬玉と同じように香りの高い物を入れた袋である「茱萸嚢(しゅゆのう)」を作り、端午の節句に作った薬玉と掛けかえました。
さらに茱萸嚢は、次の端午の節句で薬玉と掛けかえていたといわれます。*3

*2 (現代語訳)「節句は、五月に及ぶものはない。菖蒲や蓬などがともに香っている様子は、とても趣がある。(中略) 空の様子は一面に曇っているが中宮の御所では中宮御用の薬玉ということで、縫殿から色々な色の糸を組んで垂らした薬玉を献上するのだが、御帳台を立てた母屋の柱の左右にそれを掛けておく」
*3 そして茱萸嚢(しゅゆのう)は、次の端午の節句で薬玉と掛けかえます。
弥生神社では毎年、重陽の節句にあわせて茱萸嚢作りのワークショップを開催しています。

薬玉づくりワークショップ~草の香りに満たされて思い思いの薬玉を作る~

弥生神社では毎年、端午の節句に合わせて「薬玉づくり」のワークショップを開催しています。
今年は4月29日と30日の二日間開催しました。
当日はまず、弥生神社の拝殿で参拝をします。
お祓いを受けて清々しい気持ちになったところで、ワークショップの会場へ。

ワークショップでは、「古代薬玉の図」などを見ながら端午の節句や薬玉について学びます。
そののち、材料も形も現代風にアレンジして、参加の皆さんがオリジナルの薬玉を思い思いに作っていきます。
まずはペーパー(紙)バンドを裂いて輪にしながら組み合わせ、玉の部分の骨組みを作ります。
ボンドと洗濯ばさみで固定しながら、10cmほどの玉が完成していきます。

中身は、様々な薬草類。蓬や枇杷(びわ)の葉、月桂樹など乾燥した薬草をたっぷりと使います。
それらを包むのは色とりどりの絹布。薬草が詰まってふっくらとしたそれぞれの包みは、色糸で巻いて結びます。

それから香の物を少しずつ和紙で包みます。丁子甘松(かんしょう)山奈(さんな)唐樒(とうしきみ)など。
お好みの香りを選んで包み、水引で結びます。
薬玉の下部には、江戸打ち紐を結んで垂らします。
今回は、縁起の良い「几帳結び」にも挑戦しました。

紐には鈴やトンボ玉や木のビーズをつけて飾ります。
そして、仕あげに30~50センチほどの長くて大きな葉蘭(はらん)や菖蒲の生葉をつけていきます。
緑の鮮やかな生葉は、薬玉全体を生き生きと引き立てます。

ですが、こちらがなかなか思うような向きや形に結び付けられません。
できあがりも予想外のものになります。
そこに自然のもの、生きものの良さや面白さを感じることができます。

身近な草草に目を向ける

このワークショップのもうひとつのテーマは「身のまわりの薬草」
神社周辺から採集した三十種類ほどの植物が、会場に並びます。
アザミ、ギシギシ、ヤツデ、ドクダミ、ハハコグサ、ヘラオオバコ、スギナ…調べると、どの植物にも薬効というものがあります。

ふだん見過ごされそうな道端の「雑草」。
昔の人々はそんな草花に効用をみつけ利用法を編み出し願いを込めて、日常生活や年中行事に取り込んでいたのでしょう。
そんなふうに身近な植物に目を向けて、それぞれの価値や歴史に思いを馳せながら、これから迎える初夏、瑞々しい季節を過ごしてみてはいかがでしょうか。

 

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