読者の皆さまこんにちは。弥生神社の権禰宜です。
弥生神社の境内では黄色く色づいた銀杏の葉も散りはじめ、師走がやってきました。
もうすぐ年越しとお正月を迎えます。
お正月はもともと歳神様をお迎えする行事でもありました。
そして、お正月の縁起物のひとつである熊手は「福をかきこむ」という意味がありますが、もともとは「酉の市」で農具として売られているものでした。
今回は、歳神様と熊手のお話を、弥生神社の「熊手を飾る」ワークショップとともにご紹介します。
歳神と歳徳神
「歳神(年神)」は、正月に訪れて新しい年をもたらす神として「正月様」などともよばれます。
歳神の「とし」には、五穀、稲の実りの意があり、新年に降臨して豊かな実りをもたらす神と考えられてきました。
歳神を迎える正月行事と盆行事が似ているなどから、歳神は祖先の霊であるとも考えられています。
歳神にみられる農耕神の信仰に、その年の吉方(恵方)を司る神という陰陽道の説が加わったものが「歳徳神」の信仰です。
歳神、歳徳神ともに正月に来訪する点では同じですが、歳神は歳徳神のいっそう古い姿であると言われています。
年用意と年男
新年を迎える準備が「年用意」です。
煤払(すすばらい:大掃除)で、畳替、障子の張替えなどで家屋を清め、歳神の依代(よりしろ:降臨する場所)として門松を立てます。
「おがみ松」という大黒柱を立てたり、炉端に松を立てたりする地域もあります。
また、「年神棚」、「歳徳棚」という臨時の神棚を設けて、注連縄(しめなわ)を飾り、鏡、餅、神酒、塩などを供えて神様を迎えます。
歳神を祭る司祭者である「年男」には家長があたり、神棚に供える若水くみ、神饌(しんせん:神様のお食事)のあげおろし、炊事などを務めました。
年越しと大年火
大晦日から元旦にかけての間を「大歳」、「年の夜」といい、歳神を迎えるために心身を清め終夜眠らずに過ごすのが年越しの古くからの形でした。
この夜の食事は、「御節(おせち)」「年取り」とよばれました。
歳神に御膳を供え、家族全員がその前で食事し、元旦には、歳神の神威を享受するため、家族全員でお供えした神饌をいただきました。
また、歳神を迎えるための神聖な火を新しい年に継ぐ意から、正月三日間あるいは七日間、囲炉裏の火種を絶やさぬようにしている地域もあります。
この火を「大年火」、「万年火」などとよびます。神社では篝火(かがりび)を焚いて元旦を迎えます。
昔は参拝者がその火を分けてもらい、元旦の灯明や料理に点火するところもありました。
このように、正月を迎える準備は歳神様を迎える準備であり、お迎えした神様を人々は心を込めておもてなしをして、一家の一年の幸福を祈りました。
正月準備における様々な風習は、日本各地で今も引き継がれています。
縁起熊手(えんぎくまで)と酉の市(とりのいち)
11月の酉の日、東京を中心に関東各地の神社で「酉の市」が行われます。
酉の市では、“福をかきこむ”という意味からおかめや俵など招福の縁起物を飾った「縁起熊手」を売る露店が立ち並びます。
そのはじまりは足立区花畑にある大鷲(おおとり)神社の祭礼であったといわれます。
この祭りでは、人々が鶏をおさめて開運を祈り、祭りの翌日、納められた鶏を浅草観音堂の前に放つ風習がありました。
この市では熊手や鍬などの農具を販売していましたが、しだいに縁起物がおまけとして農具につけられるようになったというのが、現在の縁起熊手の由来です。
また、浅草の鷲(おおとり)神社では、日本武尊が鷲神社に先勝祈願をし、成就した際、お礼に武具の熊手を奉納したのが酉の市のはじまりと伝えています。
ちなみに、月の最初の酉の日を「一の酉」つぎを「二の酉」といい、三の酉まである年は火事が多いという言い伝えがありました。
(平成30年は、一の酉が11月1日、「二の酉」が11月13日、三の酉が11月25日でした。)
弥生神社ワークショップ「熊手を飾ろう」
弥生神社では、毎年12月に「熊手を飾る」ワークショップを開催しております。
今年は12月22日、23日の2日間です。いずれも14時から、2時間ほどです。
竹製の小さな熊手に、自然素材や和紙、水引などを思い思いにつけて飾り、オリジナルの熊手を作るワークショップです。
まずは、拝殿にて熊手のお祓いを受け、参拝をします。
そして会場にて様々な素材から20センチほどの熊手を飾っていきます。
繭玉は干支(来年は亥:イノシシです)の形に、金と赤の厚紙で扇を、水引で簡単な淡路結びや松などを作ります。
江戸打ち紐や鈴のほか、自然素材は稲穂と麦の穂、松を準備しております。
“福をかき集める”縁起物の熊手。何かと気ぜわしい師走ですが、私にとっての福、豊かさや幸せってなんだろうとあれこれ思いながら、ゆったりとした気持ちで新年に飾る熊手を作るのはいかがでしょうか。
ご予約不要です。お気軽にお越しください。
*昨年ご参加され、昨年の熊手をお納めになる方はお持ちください。お預かりしましてお祓い致します。
*小学生のお子様でも作れます。(小学校低学年以下のお子様は保護者様とご参加くださいませ)
*写真は、昨年のワークショップの様子です。
【参考文献】
五十嵐謙吉『歳時の文化事典』(八坂書房)平成十八年
國學院大學日本文化研究所編『神道事典』(弘文堂)平成十一年
大塚民俗学会編『民俗学事典』(弘文堂)平成六年
『現代用語の基礎知識』編集部編『縁起物 福を招くかたち』
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